イラクで邦人の拉致事件が2件続いた。 幸いなことに2件とも人質は解放され国民の誰もがホッとした。 取り敢えず一段落したところで出て来たのが“自己責任”という文言である。 『自分の事は自分で行い、他に迷惑を及ばさず自身で完結させる』と言ったところが概念であろうか。

  今回の拉致事件の被害者はイラクへのボランティア目的や報道目的、状況視察等の人々である。 全員が全員、自己責任を弁えていたかといえば首を傾げざるを得ない人も居たのは確かである。
  しかし、何れにしても悪意でイラクに行った人は一人も居ない筈である。 相当の自己責任を弁え、イラクへの何等かの使命感を持って入国したが、結果としてたまたま拉致事件に遭遇し人質になってしまったものである。
  いくら自己責任を弁えていても不幸にも拉致事件に遭い、人質になってしまった人々に個人で何が出来ようか。 そんな不幸を解決するために国家があり政府がある。政府には在外邦人の保護の義務が課されている。 パスポートの文言だけではなく実質的にも邦人保護の責務を負うのである。
  今回の一連の拉致事件はたまたま“良い結果”で解決が図られたが“不幸な結果”だったらどうだろう。 こんなにも自己責任、自己責任と言えるのだろうか。 今回の一連の事件では政府も迅速に対応したと思う。しかし、それが必ずしも効果的であったかどうかは別である。やたらに右往左往している部分ばかりが露呈して頼りないこと夥しい。
  今後は今回の事件を教訓に、もっと迅速で効果的な活動を行って貰いたいものである。勿論、今回のような事件が起きないに越したことは無いが事件、事故は何時やって来るか分からない。
  一義的には危険地帯に入るということは確かに大いなる自己責任である。だからといって個人ではどうにもならない状況も想定される。政府も一部のマスコミも今回の拉致事件で結果オーライになってから自己責任を声高に言い始めたのが気になる。

  今回の事件の5人はあくまでも被害者である。色々な部分で認識の甘さがあったのは否定出来ないが、彼らや彼女らのボランティア精神、人道精神には多くの日本人が学ぶべきところがあるのではないだろうか。(勿論、自己責任とは何かの自問も含めて) 何もしないで非難だけしているのが一番楽で危険も無いのは確かだろうが・・・・・。