過日、ノーベル賞受賞者の発表があった。 日本ではノーベル物理学賞に小柴昌俊東大名誉教授(76歳)とノーベル化学賞に㈱島津製作所の田中耕一さん(43歳)が受賞した。

  今回の日本でのノーベル賞受賞が大きく騒がれたのは2名同時受賞と田中耕一さんの43歳という若さにある。 小柴・田中両氏の受賞功績は、学生時代から化学や科学が苦手だった私にはよく分からないのが本音だが正しくノーベル賞級なのだろう。

  ㈱島津製作所と言えば精密分析機器等では世界的な企業である。そこの一研究者である田中さんがノーベル化学賞を受賞した背景には勤務先が京都という土地柄と研究一筋を認める社風があったのだろう。 今回の受賞の功績理由である研究成果も発表当時は必ずしも好評ではなかったと聞く。 それでもめげずに研究を続けた田中さんの粘り腰、研究を続けさせた会社の度量の大きさがノーベル賞に結び付いたのであろう。 田中さんは研究一筋に没入したいが為に昇格試験も受けずに居たそうである。 周りがどんどん出世していく中で、そんな事には無関心で研究を続けるというサラリーマンとっては或る意味で羨ましくもあり清々しくもある。 今回のノーベル賞受賞で会社は田中さんの処遇を巡っててんやわんやのようである。 田中さんの名前を冠した研究所の設立、報奨金の支給、地位の向上等々。こんな騒動も何となく微笑ましく見えるのも田中さんのあのおっとりとした雰囲気の為かも知れない。

  毎日が何となく不安な現在の日本にとってノーベル賞2人同時受賞は元気を与えてくれた。 それも2人の内の一方が43歳の若き研究者といったところに何となく明るい未来が感じられる。 それにひきかえ政治家たちの何と明るさの無きことよ。 特に経済・金融政策、雇用政策の猫の目のようにクルクル変わる安易さと迂闊な発言には呆れるばかりである。 ノーベル賞クラスの頭はないまでも政策を一所懸命に研究し官僚に頼らずとも実施できるくらいの判断力は欲しいものである。 せめて田中さんの爪の垢でも飲んで貰いたい。いや、爪の垢くらいじゃ足りないかな・・・。