先月(1月)末突然に田中外務大臣が更迭された。野上次官、鈴木宗男議運委員長との3点セットにして。 事の始まりはアフガニスタン問題東京会議へのNGO出席に関して、鈴木氏が『出席させるな』と言った言わないの些事である。(各関係者には些事ではないかも知れぬが) 揚げ句に田中大臣は涙を見せ、野上次官は刺し違えを誇り、鈴木氏はしらを切り通した。

  今回の事件だけを見ればNGO代表の証言や小泉首相自身の記者会見での『一議員の言動に外務省が翻弄されては困る』等の発言から、鈴木氏の意志を外務省が具現したことはほぼ明白ではないだろうか。 田中前外務大臣の資質には就任当初から疑問符が付けら、その疑問の通り種々のヘマをしでかして来た。 そもそもの齟齬は外務省に乗り込み、機密費問題の解明を宣言し、外務官僚=悪人、の短絡的なイメージを描いてしまったことだろう。機密費問題を解明するには何よりも官僚の協力が必要だった筈なのに、最初から敵対しては出来るものも出来ないのは当然の理。出来ないから焦り、その焦りからますます官僚との溝を深める事の繰り返し。更迭は遅かれ早かれ時間の問題で、いくら国民の目を政治に近付けさせた功績大と言えども、本来の外交を機能不全に陥らせては元も子もないだろう。

  しかし一大臣の首が“言った言わない”で飛ぶとは前代未聞のお笑い種であり顰蹙ものである。 後任の外相には小泉首相が切望していた緒方貞子アフガニスタン支援政府代表には固辞され、結局は川口環境相が横滑りした。 緒方氏が外相就任なら内閣支持率の降下も最小限で済むとの計算もご破算、相当の急降下は避けられないであろう。まして、痛みばかりが大きく広がっている構造改革も人気(内閣支持率)急降下では道険しである。

  政治家は最高の言論人の筈である。少なくとも言った言わないの低次元でやり取りをするのではなく、国のあるべき姿、理想とする社会・世界とそこへの道筋などで論を戦わせるべきであろう。 いまは寒さ本番の2月だが政・官界は秋、それも『もの言えば唇寒し』の。 春未だ遠し・・・